『世界をまどわせた地図 -伝説と誤解が生んだ冒険の物語』【ブックレビュー】

こんにちは!kei_tamです!

今回はナショナル・ジオグラフィック社より出版されたなんとも魅惑的なタイトルの本『世界をまどわせた地図 -伝説と誤解が生んだ冒険の物語』を紹介します。

かつて実際に世界地図に載り、しかし時を経て実在しないことが確認され姿を消していった島や大陸。それらの奇妙な幻が生まれてしまったストーリーを紐解いていくという、なんとも興味深いノンフィクションミステリー本です。

この本は図鑑だと考えると良いです。
内容は重厚なのですが58個のエピソードが一つにつき4〜6ページの簡潔な話にまとまっているため気軽に読みやすく、一気に読むというよりは本棚に置いておいて思いついた時にふとから手にとって読む類の本ですね。
奇想天外な絵も盛りだくさんで、子どもでも楽しめます。

タイトルだけ見るとコンビニなどで売っているトンデモSF本のようですが、そこは地理に関する世界有数の団体として有名なナショナル・ジオグラフィック社の発行!
あまりのクオリティの高さに驚かされました。出版社のHPからイメージを引用します。

実際の図版が豊富に掲載されている。 –ナショナル・ジオグラフィック社HPより

「十字軍を救うと信じられた偉大な王の国」なんて魅惑的なサブタイトルですよね。
こういう「ちょっと面白そうだな」と思うような興味をそそられるストーリーがなんと58個も。
すごい変な本ですよね。

「なんでまたこんな作るのに手間が掛かるニッチなテーマの本を出そうと思ったんだろう?文献を調べるだけでも骨が折れそう…」

実はこの本、図鑑ではあるのですが、出版が制作チームを組んで編纂したものではなく、ある一人の人間によって書かれたものなのです。

それが著者としてクレジットされているエドワード・ブルック=ヒッチング氏。この人が面白い!

彼はロンドンに住む古地図の愛好家の方だそうで、本に載っている文献はすべて彼がコレクションした貴重な図版なのだそうです(そんな変わった人がいるんですね。。)
それも生半可ではなく、「よくこれほどまでの情報を集められたもんだ」と感心してしまうほどの情報量。

豊富に掲載されている挿絵の古地図も、地図というよりファンタジーのような世界観です。例えば海のエリアに海獣が描かれていたり、中世のタペストリーにような、美術館に飾られていてもおかしくない凝ったデザインのものであったり。子どもが読んだらきっと空想を膨らませること間違いなしです(一枚の地図には、日本の南の海域にも海獣が!)。まるで歴史を旅しているような気分になる。

しかし、そういったイメージ以上にこの本を面白くしているのは、エピソードに登場する実在の人物たちでしょう。

幻が生み出されてしまう理由は様々あります。勘違いや噂話を元に地図に載ってしまうパターン、あるいは噓の報告や言い伝え、虚構を元にして描かれるパターンなど。ただ確かに言えるのは、未知なる領域を手に入れようとする人々の野心が幻を生み出した側面があるということ。時には小説より奇妙なミステリーとなる。

58載っているエピソードのうち、一つ紹介しましょう。
「ベルメハ」という島についてのエピソードなのですが、これが面白いです!

ベルメハ島が最初に地図に登場したのは16世紀。メキシコ湾の真ん中、アメリカの南、メキシコの東に浮かぶ島として、アロンソ・デ・シャーベスが1540年ごろに『航海士の鏡』という書物の中で初めて正確な位置を記している。それ以来、有力な目撃情報は現れないものの、19世紀まで世界地図に載り続け、1921年に製作された地図を最後にこの島はひっそりと姿を消した。

しかし、1990年代になって突如、メキシコ政府がこの島の存在を必死になって探し始める。事の発端は1982年に採択された国連海洋法条約。この条約によって、各国の沿岸から200海里をその国の排他的経済水域と定められた。そして古地図に描かれたベルメハ島の位置は、メキシコの排他的経済水域の外。メキシコ政府は何としてもこの島の「存在」が欲しかった。なぜなら、この地帯は海洋資源が豊富で、石油が潤沢に埋蔵されている地帯だったからだ。メキシコ政府は軍を派遣して海上探索に当たらせるが、見つからない。諦めないメキシコ政府は空からも探索に当たらせるが、やはり見つからなかった。

しかし、ここで終わらないのが面白いところである。調査結果を受けてメキシコ国内で持ち上がったのは、油田利権の拡大を目論むアメリカのCIAにより島が破壊されたという陰謀説だった。議員のグループがこの説の正当性を唱え、調査を要求。果てには、調査を要求した議長が何者かに殺害されるという事件まで発生し。。

実在の怪しまれる島が地図に載ってしまったことで起こった国を巻き込むミステリー。この島を巡る議論が決着を見たのは2009年とつい最近だ。アトランティス大陸といった比較的有名な例から、このようないわく付きのエリアまで、本書では世界地図という観点から豊富に紹介されています。

さて、本書で各エピソードの題材として取り上げられる地図の多くは、16世紀ごろの大航海時代に作られたもの。ヨーロッパという限られた域内から、ようやく外に目が向けられ、まさに世界の探索が夜明けを迎えた時代ですね。

その当時、ポルトガルやスペインといった海洋探索の先陣を切った国々の海岸から、未知なる世界へと繋がる大西洋の大海原を眺めていた人々の気持ちは、ちょうど今私たちが宇宙に馳せる思いと同じだったでしょう。

つい現代の視点で物事を考えてしまいがちですが、当時の海洋探索を進めた人々の多くは、野心に駆られた民間の探検家たち。資産家や国王から出資を募って航海に出ていた。まさに現代の宇宙ベンチャーといったところだ。

そうした探検家たちが持ち帰った情報を元に、製作者たちは地図を作成していった。しかし当然、測量技術も知識も不完全なため間違いが起こる。時には野心が空回りして、ありもしない島をでっち上げて探検記を書き上げるペテン師まで現れる。

「昔はもっとおおらかで緩かった」そんな時代にしか起こりえない、技術が発達した現代ではもはや起こりようのない地理ミステリーの数々を楽しんでみてはいかがだろうか。

それでは、みなさんの人生が前向きになることを祈って!
See you next time!

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ケイタム
1990年2月生まれ みずがめ座 経歴:早稲田大学→音響系EC会社の海外調達部署→Web広告代理店にて広告運用 趣味:音楽、競馬、読書、カメラ、アウトドア、ラーメン屋めぐり 好きなアーティスト:スピッツ/King Gnu/サザンオールスターズ/Fishmans/きゃりーぱみゅぱみゅ/The Beatles/Jamiroquai/Two Door Cinema Club/Oasis/Friendly Fires/Foster the People/Grouplove/ワインレッドの心 好きな馬:キセキ