『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』レビュー

ネットで調べて大人の発達障害にどんな特徴があるのかは分かった。
じゃあどうやったら社会生活を楽に生きられるようになるのか教えて!

この悩みに解決の方法を与えてくれる本『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』を紹介します。

ADHDやアスペルガーなど発達障害に関連する本は続々と出版されていますが、この本の最大の特徴は現役のサラリーマンで発達障害の当事者が書いた本だという点

だから、発達障害を抱えている、またはその傾向がある人にとっての「あるある」が盛りだくさん。
それらに対してどういうライフハックで対処してきたかという説明も「なるほど」の連続でした。

多くの患者を診てきた専門家の方の本ももちろん参考になるのですが、「普通の人になることにすごく憧れる」とか「探し物があると見つかるまで気が済まない」とか、なかなか当事者でないと分からない感覚ってあると思うんです。

それらにどう向き合うかを学べるのが、この本です。

『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』レビュー

さて発達障害の当事者が書いた本であるなら、著者がどういう人物なのかがとても大事ですよね。
見てみましょう。

著者は借金玉さん。
本名なわけないですし、ペンネームにしては奇抜ですよね。これには理由があって、借金玉さんはもともとTwitterで発達障害の人へ情報を発信していた人なんですね。
だからTwitterネームというわけです。

金融会社に就職し失敗したあと、起業した経験を経て、現在は不動産関係の営業職をされているそうです。

借金玉さんは多動衝動性優勢型のADHDをお持ちの方です。
ここで少し説明を加えておくと、一口にADHDといっても大きく分けると2つのタイプがあるんです。

一つが借金玉さんのような多動衝動性優勢型。
このタイプは、喋りすぎたりやりすぎちゃうタイプのADHDです。陽のコミュ障と言ったら分かりやすいかもしれません。落ち着きがなかったり、新しい物好きで熱しやすく冷めやすい性格が多いタイプです。

もう一つは不注意優勢型のADHD。僕はこちらの傾向があります。
このタイプは繊細で傷つきやすい、陰のコミュ障といえるタイプ。人と比べて出来ないことに直面して落ち込み、自己肯定感が低く劣等感を抱えているケースが多いといいます。

同じADHDでも、外から見ると真逆の症状なのです。
この本は主に前者の視点で書かれているので、「自分は前者のタイプだ」という人には特に共感できる話が多いでしょう。

ただし、どちらのタイプであっても原因は同じなので、参考にできる話は大いにありますよ。

「くだらないこと」それが普通の人になるための「掟」

この本は5つの章で構成されています。

第1章 自分を変えるな、「道具に頼れ」【仕事】
第2章   全ての会社は「部族」である 【人間関係】
第3章   朝起きれず、夜眠れないあなたへ 【生活習慣】
第4章 厄介な友「薬・酒」とどう付き合うか【依存】
第5章 僕が「うつの底」から抜け出した方法 【生存】

タイトルを見てわかると思いますが、がっつり発達障害の症状が見られる人にとってのライフハックが中心です。
「道具に頼れ」の章では容量が大きく開口部が広いバッグを使え、だったり「薬・酒」の章ではADHD治療薬のコンサータやストラテラの話が出てきます。
うつ病で自殺未遂を繰り返したりといった話も。。

軽い症状の人にとってはあまりピンとこない話も多いかもしれません。
その中でどんな人にとっても、たとえ発達障害でなかったとしても役に立つであろう処世術が書かれているのが第2章『全ての会社は「部族」である』です。

アドラー心理学が語る通り、結局のところ人の悩みとはすべて「人間関係の悩み」なのでしょう。
この章は本当に読んでいて面白いです。

たとえば、
「雑談はよくキャッチボールにたとえられるが、僕はこのキャッチボールが大嫌い」「(雑談の)どこに面白みがあるのかいまだにわかりません」

とか

「金がすべてのビジネスの世界は、むしろコミュニケーションの目的が明確だからやりやすい」
とか、とてもしっくりくる説明が盛りだくさんでした。

会社やコミュニティといったものは「部族」なのだ。
そこに入ったならば気が進まなくても掟に従うべきである。
そこには「見えない通貨」によって人間関係が円滑に進むようになっている。

見えない通貨の代表格が「上司の面子を立てる」「全員に挨拶」「先輩の褒め上げ」の3つだと。
くだらないと思ってもこれらを意図的にやることで、職場の人間関係の苦しさから解放されるという。

やるべき行動が具体的に書かれていることも重要なのだが、それ以上に「くだらないと心の底では思っても自分を殺してやるべき」という発言の潔さがとても気持ちいい。

このスタンスは立場のある専門家の人が言えないセリフだ。
そして、あなたもきっとそう思った経験があるのではないだろうか。

僕も経験があるのだが、発達障害の傾向がある人は自分が生きている社会のスタンダードな人間と比べて少しズレている。
もしそのズレを直して社会に順応したいというのならば、本を読んだり人を観察したりして、どうすればスタンダードな人間に近づけるのかを技術として獲得して、それを実践するしかないのではないかと思う。

そうやって自分を騙して行動していると、いつの間にかこれまで嫌っていた「くだらなさ」にすっかり適応してしまっている自分に気づく。

そうやって順応していくことが良いことなのかどうかは分からない。
けれど、人間関係がスムーズになることで楽な気持ちになることは確かだ。

その順応する術を学び取りたいのなら、この本は読む価値があるでしょう。

それでは、みなさんの人生が前向きになることを祈って!
See you next time!

ABOUT US
ケイタム(ハジメ)
1990年2月生まれ みずがめ座 経歴:早稲田大学→音響系EC会社→Web広告代理店にて広告運用→Web系スタートアップ 趣味:音楽、読書、チャイ、競馬、アウトドア、ラーメン屋めぐり 好きなアーティスト:スピッツ/くるり/サザンオールスターズ/Fishmans/The Beatles/Jamiroquai/Copeland 好きな馬:キセキ