『嫌われる勇気』を読んだあとに自分を変える方法

『嫌われる勇気』を読んだ!
でも、これをどうやったら日常生活に生かしたらいいんだろう…

大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』。
哲学者の岸見一郎さん監修のもとアドラー心理学の教えを分かりやすい対話形式で解説した本です。

本書がここまで売れている理由は、「人間関係」「劣等感」「幸福」「人は変われる」「承認欲求」など、現代の生き方に関するキーワードに対して直球に切り込み、そして回答を与える本だったからだと思う。

「心理学の大家アドラーの教え」という権威性もありますね。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」というアドラー心理学のコアも現代とマッチしているのではないかと思います。

そして説明も噛み砕かれていて分かりやすいし、問題に対する回答も明確。
上に挙げたような悩みを抱えた経験がある人ならば、読めば「なるほど、たしかに」の連続になることは間違いないでしょう。

一方でこの本には難しさもあります。

僕が感じたのは「書いてあることを行動にうつす難しさ」。
すでに読んだ人の中には「目から鱗が落ちる感覚があったけれど、日常生活に生かして何か変われたかというと、そこまではできてない」という人も多いのではないかと思います。

今回はその点について考えてみたいと思います。
『嫌われる勇気』の教えをどうやって日常生活に生かすか、という課題についてです。

「課題の分離」だけに絞って実践する

もとより『嫌われる勇気』はアドラー心理学という「学問」の入門書であって、ライフハックを伝える自己啓発書とは少しコンセプトが異なります。

だから「共同体感覚」「勇気づけ」「目的論」など抽象的な難しい用語も出てきますし、それらの概念を一つ一つ解説がされる。
そのどれもが生き方に関わる重要なではあるのですが、難解なそれらをすべて理解し自分のものにするのは時間も掛かりますし難しい。

本の中でもアドラー心理学は実践に移すのは難しい、時間がかかるものだと語られていますね。

アドラー心理学の全体を理解し体現するのは難しい。
であれば、テーマごとに分けて実践していくのが現実的です。

本の中に出てくる概念の中で、一番実践に移しやすいく効果の大きなテーマは「課題の分離」でしょう。
まずはこの概念だけ自分の生活にとり入れてみるのはいかがでしょうか。

課題の分離とは?

たとえば、なかなか勉強しない子どもがいる。授業は聞かず、宿題もやらず、教科書すらも学校に置いてくる。さて、もしあなたが親だったら、どうされますか?

アドラーの教えに従えば、「勉強しなさい、学校に行ったら」と言ってはいけない。ただ、子どもが勉強したい、学校に行きたいと思った時にそれを全力でサポートすることを約束するのだという。

目の前に「勉強する」という課題があったとき、アドラー心理学では「これは誰の課題なのか?」という観点から考えを進めていきます。

子どもが勉強するのかしないのか。あるいは、友達と遊びに行くのかいかないのか。本来これは「子どもの課題」であって、親の課題ではありません。

たしかに世の親たちは、頻繁に「あなたのためを思って」という言葉を使います。しかし、親たちは明らかに自分の目的ーそれは世間体か見栄かもしれませんし、支配欲かもしれませんーを満たすために動いています。つまり、「あなたのため」ではなく「わたしのため」であり、その欺瞞を察知するからこそ、子どもは反発するのです。

なかなかハッとさせられる指摘ではないでしょうか。

およそあらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことーあるいは自分の課題に土足で踏み込まれることーによって引き起こされます。課題の分離ができるだけで、対人関係は激変するでしょう。

つまり、「良好な人間関係を築くためには、自分のためではなく、他人のためを思って行動しなさいよ」ということです。

「当たりまえじゃん」と思われるかもれません。
「もうやってるよ」という人もいるかもしれません。

しかし、自分では他者志向の行動をやっているつもりでも、実はできていないケースが多いのです。

その一つの例が先に引用した、勉強をめぐって親と子どもが対立してしまう理由について。
加えてビジネスにおける例も考えてみましょう。

あるとき、朝礼で社内でも注目されていた案件の成功が表彰されることになりました。
その案件を担当したのはあなたを中心としたチーム。
代表してあなたが前に立って一言を述べることになりました。

あなたはこう言いました
「今回の案件は僕が取りまとめこそしましたが、最も頑張ってくれたのは〇〇さんなんです。彼の頑張りにチームメンバーの協力があって、成し遂げられたんです。彼らのおかげです。」

さてこの素敵なスピーチと「課題の分離」どのような関係があるのか。
注目すべきはスピーチの中身ではなく、この発言の裏にあるあなたの意図です。

「〇〇さんには本当に助けられた。素晴らしいチームメンバーに支えられて、感謝の気持ちを言葉にしたかった。」
「自分の手柄だとことさら強調するのは印象が悪いよね。こういうスピーチはメンバーへ感謝するのが一番世間体がいい。」

さてどちらでしょう。
前者は「自分の課題に収まっているパターン」、後者は「他者の課題に踏み込んだパターン」。

アドラー心理学の立場に立てば、問題になるのはもちろん後者「他者の課題に踏み込んだパターン」です。

後者が問題なのは、本来あなたのスピーチに対して聞き手がどういう印象を抱くかは、その聞き手次第なのに、「いい印象を与えよう」と操作してしまっている点です。

どちらの場合も「他者を思いやるスピーチをした」という事実は変わりませんし、自分の手柄をことさら主張するよりはメンバーへの感謝を伝えたほうがいい、というのは誰もが正しいと感じるでしょう。

ただアドラー心理学の考え方に従うと、案件の成功に対する貢献度は自分が一番大きかったと信じている場合、「自分が頑張ったので成功しました」と発言するのが正しいというのです。

それに対して聞き手がどう感じるかは、その聞き手の課題であり、自分が操作できる領域ではないから。

「〇〇さんのおかげです」と世間体を気にした発言をすることは、他者の期待に応えようとすることに他ならず、他者の奴隷になることとイコール。
こうして他者の奴隷になってしまうことが、人間関係の悩みが生まれる根本原因だということです。

もし自分本位な発言をすれば、良い印象を持たない人も多く出てくるでしょう。
自分を嫌いになる人も出てくるかもしれない。

それでも他者の奴隷から解放されるには、他者の課題に踏み込まないことが必要となる。
自由になるための「嫌われる勇気」はあなたにはありますか、というのがまさに本のテーマです。

このように現実問題に即してみると、場合によるとかなり厳しい要求を突きつけてくる教えだというのが分かります。

でも試してみる価値はあります。
一度試しただけで人生は崩れません。

もしそれが上手くいって、「自分の課題」と「他者の課題」を分ける考え方を習慣にすることができれば、人間関係はずっと楽になっていく。

『嫌われる勇気』は読みやすいし、共感できる話ばかり。
社会現象になるほど売れてるのは、それほど人間関係の悩みを解決したいと願う人が多い証拠ですよね。

ただそれを実行に移して変われたという人はどれほどいるのでしょう。
本を読んで内容に共感するだけでは、正直読んでいないのと同じです。

書かれていることすべてを実行する必要はないと思います。それはハードルが高い。
ぜひ、一つだけでもピックアップして自分のものにしてみてはいかがでしょうか。

おまけ

もし課題の分離についてまだ納得できないという人は、より分かりやすい『自分の小さな「箱」から脱出する方法』という本があります。

こちらはアドラー心理学の本ではないのですが、扱っているテーマは「課題の分離」に近いです。

自分志向と他者志向の違いを「箱」というイメージを使って説明するのですが、ビジネス書として書かれているので、本の内容はより具体的で分かりやすいです。

それでは、みなさんの人生が前向きになることを祈って!
See you next time!

ABOUT US
ケイタム(ハジメ)
1990年2月生まれ みずがめ座 経歴:早稲田大学→音響系EC会社→Web広告代理店にて広告運用→Web系スタートアップ 趣味:音楽、読書、チャイ、競馬、アウトドア、ラーメン屋めぐり 好きなアーティスト:スピッツ/くるり/サザンオールスターズ/Fishmans/The Beatles/Jamiroquai/Copeland 好きな馬:キセキ